難船小僧(S・O・S・BOY) Audiobook By 夢野 久作 cover art

難船小僧(S・O・S・BOY)

Preview
Try for $0.00
Prime logo Prime members: New to Audible?
Get 2 free audiobooks during trial.
Pick 1 audiobook a month from our unmatched collection.
Listen all you want to thousands of included audiobooks, Originals, and podcasts.
Access exclusive sales and deals.
Premium Plus auto-renews for $14.95/mo after 30 days. Cancel anytime.

難船小僧(S・O・S・BOY)

By: 夢野 久作
Narrated by: 西村 健志
Try for $0.00

$14.95/month after 30 days. Cancel anytime.

Buy for $6.95

Buy for $6.95

Confirm purchase
Pay using card ending in
By confirming your purchase, you agree to Audible's Conditions of Use, License, and Amazon's Privacy Notice. Taxes where applicable.
Cancel

About this listen

「ギャア――。ウワアッ。助けて助けて……カンニンして下サアイ。僕はこの船を降りますから……どうぞどうぞ……助けてエ助けてエッ……」

「アハハハ。どうもしねえだよ。仕事を手伝いせえすれあ、ええんだ」

「許して……許して下さあい。僕……僕は……お母さんが……姉さんが家(うち)に居るんですから……」

「ウハハハハ……云う事を聴かねえとコレだぞ」

「致します致します。何でも致します。……すぐに……すぐに船から下して下さい。殺さないで下さい」

「知ってやがったか。ワハハハハハハハ」



 昭和二年頃の十月の末だったっけ……

 足音高くブリッジに登って行った俺は、船長(おやじ)の背後でワザと足音高く立停まった。

「おはよう……」と声をかけたがは見向きもしない。何しろ船長仲間でも指折の変人だからね。何か一心に考えていたらしい。俺は右手に提げた黄色い、四角い紙包を船長の鼻の先にブラ下げてキリキリと回転さした。

「御註文のチベット紅茶です。やッと探し出したんです」

 船長(おやじ)はやっとびっくりしたらしく首を縮めた。無言のまま六尺豊かの長身をニューとこっちへ向けて紅茶を受取った。

「ウウ……機関長か……アリガト……」とプッスリ云った。コンナ時にニンガリともしないのがこの船長の特徴なんだ。取付きの悪い事なら日本一だろう。こんな男には何でも構わない。殴られたらなぐり返す覚悟でポンポン云ってしまった方が、早わかりするものだ。



……昨夜、陸で妙な話を聞いて来たんですがね。今度お雇いになったあの伊那一郎って小僧ですね。あの小僧は有名な難船小僧っていう曰く附きの代物だって、皆云ってますぜ。あの小僧が乗組んだ船はキット沈むんだそうです。乗ったら最後どんな船でも沈めるってんでね。……だから今度はこのアラスカ丸が危えってんで、大変な評判ですがね。陸の方では……





夢野久作



日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。1889年(明治22年)1月4日-1936年(昭和11年)3月11日。他の筆名に海若藍平、香倶土三鳥など。現在では、夢久、夢Qなどと呼ばれることもある。福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇色と幻想性の色濃い作風で名高い。またホラー的な作品もある。(c)2017 Pan Rolling
Horror Mystery
adbl_web_global_use_to_activate_T1_webcro805_stickypopup
No reviews yet